ダンスなんてできない

僕はダンスなんてできない。やったこともないし、やろうと思ったこともないし、うまくできそうにない。体を動かすのは嫌いじゃないけど、ディスコやクラブに行ったこともない。音楽に合わせて踊るってことを、人生今の今までほとんどやらなかった。

ほとんどというのは学校の授業や体育祭でかろうじて、マドンナやらシンディ・ローパーやらを踊ったような記憶があるだけで、うまく踊れたような気がしない。盆踊りでさえたぶん踊れないだろう。

僕は音楽が好きなんだが、ビート・リズムより、旋律、音色、そういうものを重視して聞いているような気がする。テクノは通過してないし、それよりもソウルフルなものに愛情を抱くのだ。

俺は昔はテクノとかをピコピコサウンドといって軽蔑していた。今は軽蔑なんぞしてないが、積極的に聞くということはない。リズム・ビートが先行するとメロディーが後回しになって、気持ちが入っていかない。音色、声というのも俺にとっては、重要で声がちょっと変わっただけでも、聞かなくなる歌手もいる。

俺がダンスに興味がなくて、ジム・モリスンの詩集やT・REXの詩集を読みふけっていたのは偶然ではない。歌からビートを読みとるのではなく、意味を読みとろうとしていた。今もそうかもしれない。

音楽番組を見ているとバンドは少なくアイドルばかりだ。アイドルは踊る。みんなで。子供の頃ピンクレディーが大流行していて踊るのは女の子のすること、と思ったのかもしれない。男の子は踊ったりしないと勝手に決めつけたのかもしれない。チャラチャラした感じが気に入らなかったのかもしれない。

アイドルに想いを寄せたことはない。俺の中で歌はバンドが歌うものだという固定観念があって、その呪縛から抜け出れないのだろう。

三つ子の魂百まで、で子供の頃培った考え方は簡単に抜け出れそうにないし、抜け出なくてもあんまり誰にも迷惑がかからないだろうと思っているので、俺はダンスを軽く見たまま、この先も過ごすのだろう。いいジャマイカ。