電動アシスト

以前カンチェラーラがあまりにも速いので、電動モーターのメカニカルドーピング疑惑をかけられたことがある。そのときはそんなアホな話あるかい、と思ったが去年女子のシクロクロスで、実際にメカニカルドーピングがあって、ベルギーの選手が失格になったらしい。

物はシートポストに収納されてアシストするタイプで、バッテリーもシートポストに入っていたと記事に書いてあった。その選手は比較的優秀な選手で、これは友人のバイクだと言った。

メカニカルドーピングって雲を掴むような話だと思って思っていたが、電動アシストも軽くなって、勝負所だけ使うとかになれば、実用的なのかもしれない。

それにしてもだ。勝つということはどういうことだ。人間の根元には敵を倒すという本能があるのだとは思うが、その闘争心が俺にはあまりない。敵という考え方自体が希薄で、時に敵は味方になり、他人になり、見知らぬ人になる。

坂道と戦うこと自体が好きなのだと思う。電動アシストを受けて走っても、俺の心はなんだか不完全燃焼になるだろう。夏の汗、蝉の鳴き声、チェーンのなる音、自分の息づかい、僕が愛していたのは、山の中で自然と渾然一体となり、自分が何者でもなく地球の一部に解け合うことだ。