昔のこと

今病院で、入院中に担当してくれた先生に、数年ぶりにあった。入院中はほぼほぼ見えてなかったので、今あらためて見て、こんな先生やったんやなと、思った。

入院した当時のA先生は研修医あがりで俺は目以外は健康だったから、A先生の練習台としていろんな事をやらされた。ような気がする。

血漿交換の器具を鎖骨近くの動脈から入れるのだけれど、それをA先生がエコーみたいな器具を使ってグリグリと血管の位置を探って、マジックでバッテンをつけて、という作業をしたのだけれど、なかなかうまくいかなくて、結局交代になるということがあった。まあ、彼も若く経験も少なかったので、難しい局面もあったのだろう。

さっきあって世間話したら、落ち着いていて結構ちゃんとしているから、逆にびっくりした。あれから6年たったのだ。そりゃちゃんとした先生になってくれないと、練習台になった俺としては、損した事になるじゃない。

当時はシルエットと声の感じからアンガールズ田中と呼んでいたが、今もひょろりと長身で顔の感じだけが田中じゃない。

あの当時は毎日泣いていた。そんな気がする。俺はなりたいお父さん像があって、そうなれないことを悲しんでいた。病院の廊下を毎日歩いていた。俺は生きるために必死だった。

今は悲しいとは思わないが、できることが制限されているのは、大変だなと思うときがある。