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あの女

あの女と書くとシャーロック・ホームズのアイリーネ・アドラーみたいで気が引けるが、T・REXのベストアルバムを聴くとある女の子を思い出す。

大学生の時に初めてつきあった女の子だ。僕にとっても彼女にとっても初めてのお付き合いだった。俺たちは大学のキャンパスで知り合った。彼女は演劇部で僕は軽音楽部だった。彼女は同い年だが学年はいっこ上で僕は世間知らずで思いやりというものを知らずに育った。僕は正真正銘のお坊ちゃんだったのだ。

付き合ったきっかけは僕がT・REXのベストアルバムを貸したことだ。手紙が入っていた。手に蛙を持ったニューヨークのレディって曲がいいと書いてあった。純真で疑うことを知らなかった僕はその手紙の内容をそのまま受け取り彼女とは感性が合うかもしれないと思った。そしてその手紙にはお礼にご飯でもどうですかと書いてあった。

なんにも知らなかった僕はまたその言葉を額面通り受け取り、ご飯に誘った。

俺はまったく今思えばなんにも知らない猿同然だった。しかし若いというのはときに残酷なことだ。俺はそこから人生を踏み外していく。いや、たどり着けない港に漕ぎ出してしまったのだ。