猫を飼う

二、三日前から猫を飼っている。もちろん、実物ではない。ヴァーチャルなペットで、携帯電話の中に生息している。生まれたてみたいで、とても小さい。俺は猫に詳しくないのだが、嫁曰くトラ猫っていうやつらしい。

なぜ突然ヴァーチャルペットそれも猫を飼い始めたのか。いつものように意味はない。ただなんとなく、飼ったら面白いかもしれないと、思ったからだ。

携帯を開くたび、なでている。するとハートのポイントがたまっていって、床ガリガリとかソファでゴロゴロとかを覚えるのだ。

時々餌を食べているので、体重が増える。30グラム増えましたよ、と報告してくれる。日々成長するみたいだ。

ときどきカメラに近寄ってアップになる。目がクリクリでかわいいなと思わないこともない。犬でもよかったんじゃないかと、思う時もある。

この猫に名前を付けた。ジムという。なんとなく洋物の名前のほうが、現実感がなくていいような気がしたんだ。だから、尊敬する人ジム・モリスンから名前を拝借した。

名前を呼ぶこともないし、餌をあげることもない。下の世話もしない。心の交流と呼べるようなことは今はまだない。

この子もまた大きくなって、俺を驚かすのだろうか