横断歩道の上から

また絵が売れた。俺が初めて描いた絵が売れた。それはもう10年以上前に描いたビートルズの「アビーロード」のアルバムジャケットだ。

当時から絵心はなかったが、絵が好きで嫁に油絵セットをもらった。なにを書こうか迷った挙句に選んだのがアビーロードだったのだ。

最初嫁に教えてもらっていたが、だんだん大胆になって濃い緑色を塗ったら嫁に怒られて、取り返しが付かんとか言って、見放されたのだ。背景を少しと道路を少し、車を二、三台描いたところで、ジョン、ジョージ、ポール、リンゴの四人は結局描けずじまいだった。

それっきりほったらかしになっていた絵を、また油絵を再開してリンゴと瓶を描いた後に、その4人のいないアビーロードのジャケットを少し覚えたての拙い筆さばきで、加筆、修正したものが、今回売れたもので、買った人はそれを見てなにを思うのだろうかと、少し怖くもある。

嫁によく小学生の絵だと揶揄されるのだが、それでも時々買ってくれる人もいて、世の中はいろんな趣味の人がいてるねんなと、思うこともある。そしてお金に余裕のある人だ。絵が欲しいなら描けばいいじゃないかと、画家もどきになった俺は生意気なことを思ってしまう。

ビートルズが好きな人はたくさんいて、その中の一人が遊び半分で買ったのだろうか。よくわからない。その絵を飾るのだろうか。

こんなことを言うのは大変間違ってるかもしれないが、俺はビートルズのアルバムの中で「アビーロード」が一番好きじゃない。俺が好きなのは「ラバーソウル」「リボルバー」あたりでその次が「ビートルズがやってくる。ヤァ、ヤァ、ヤァ!!」かしら。

理由を書くとくどくなるので割愛するが、フィル・スペクターがなんぼのもんじゃいって感じ。

いっちょまえにアーティスト気分で、昔の作品を恥ずかしがるなんて、思い上がっているのだろうか。いやただただ、買ってくれた人に申し訳ないような気持ちになるのだが…