親知らず2

今日もまた親知らずを抜きに総合病院まできて、日帰り手術を行う。

前回よりは雰囲気になれたかもしれない。しかしまた術着に着替えさせられて、台の上に寝転ばされて、ドキドキと意味もなくするのだろう。

しかし手術台の上に寝かされて、緊張しないとなればもうそれは、死を覚悟した人ぐらいで、俺は親知らずを抜くだけだから、ぼんやりとした恐怖にドキドキしているのだろう。

終わった。女子の先生だった。少し時間がかかった。男の先生と違って丁寧だったが、パワーがないのか、慎重なのか、慣れてないのか、さっさと一気にやってほしい気持ちもある。

なんにしろたかだか親知らずだ。たいしたことはない。俺の小心者ぶりが遺憾なく発揮され、手術台の上で、ブルブルと震えていただけだ。

待っているということはつらいことだ。自分に主導権はなく、歯医者なり、外科医なり看護師が場をしきり、自分はただただ黙って不安や焦りを押し殺し、冗談や世間話をするわけでもなく、愚直なまでに黙って横になっているしかない。

それもまた親知らずを抜くというだけのことだから、大病してるわけでもなく大怪我してるわけでもないので、誰もこの手術台の上のおじさんのことを真剣に考えていない。

麻酔が切れてきて口に感覚が戻ってきた。鏡を見たらパンパンに腫れているのだろう。宍戸錠になった気分で、面白がる以外に遊べそうもない。