読書感想文らしきもの

俺がまだ病気で目が不自由になる前の話だ。俺は読書家だった。海外ミステリを好み、ハードボイルド系、推理系、冒険SF系など様々な本を読み漁った。俺にとって読書は現実逃避の場所であり、知識の源であり、自分と社会とをつなぐ道具だった。

それがどうしたものか、目が不自由になり、字が読めないことはないのだが、長時間本を読むと目が疲れ内容に手中できないぐらい、文字を追うことが困難になるのだ。俺は病気をしていろんなことをやめたが、読書をやめたことが一番つらかったと思う。俺は自分を作っていた柱の一本を失ったのだ。

俺の昔のブログでは読書感想文を書いていた。読んだ本を次から次へと批評し、感想を書き、言いたいことを言っていた。偉そうなもんだが当時はそれが何か当たり前のように思っていて、海外ミステリファンと友達になれるかもなんて、思っていたのかもしれないね。結局誰とも友達にはなれなかったが、俺の書いた読書感想文はまだこの膨大なウェブの中に残っているだろう。それが、いいものであっても、悪いものであっても。

ダン・ブラウンの「インフェルノ」を読んだ。電子書籍で。文字を白黒反転させて、大きな文字サイズにして読んだ。最後まで読むのが苦痛じゃなかった。むしろ、さすがダン・ブラウンと思わせる部分が随所に出てきて、楽しかった。俺は美術ミステリに目がない。俺は絵が好きなんだ。だから、最近油絵を始めたんだ。

目が不自由で絵が好きで読書好きというのは、難しい選択肢なのかもしれないが、難しいからこそやりがいがあるとも言える。簡単にできるようなら飽きてしまうかもしれない。