真面目な話

嘘をついた。

生来嘘が苦手で、他人を気遣うためにでも嘘がつけない。頭の回転が鈍いのだ。自分を守るためにも、どうも嘘が嘘を呼んで、首が回らなくなるのが嫌なのだ。

頭が悪いと、嘘がつけない。俺はだから天然だと言われ、空気が読めず、集団行動に向いていない。

もう自転車には乗ってないと、会社の偉い人に嘘を言った。偉い人は自分の会社の人間が怪我や病気をするのが嫌みたいで、バイクなども基本的に乗るなと言われる。その偉いさんは真面目でいい人すぎるんだ。

俺は自転車で数回こけて、骨折したり入院したり会社に迷惑をかけた。俺はロードバイク乗りだったんだ。

実際のところ、通勤には自転車を使っている。そして昔の自転車仲間と半年に一度くらいツーリングに出る。

でも俺はもう乗ってないといった。徒歩で通勤しているといった。俺はもう逃げ道がない。出世する気は無いが、嘘がバレる直属の上司とか可愛がってもらっている人に迷惑がかかる。

しかし生きているだけでどんどん、歩いて行く道が細くなってるような感覚に襲われる。

些細な嘘で人を幸せに出来るような、そんな気の利いた人間になりたい。