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嫁を怒った

エッセイ

昨日買い物の途中で黙って嫁が消えたので怒った。それぐらいで怒るとは度量の狭い男だと思われるかもしれないが、何度も書いているように僕は病気で目が不自由だ。あまり物や人を遠くから判別する事ができない。嫁は携帯電話を持っているので何度も連絡したが気付いていない。

もう帰ろうという段になってふと消えてしまったので探しようがないし、連絡も付かないので俺は怒ってそのまま帰ろうとしたが少し待って見ることにした。

しばらくして現れたがその日俺が探していたジャケットで良さそうなのがあったといった。俺は黙って消えてジャケットを探していたことを怒った。俺が病気で目が不自由なのを皆忘れている。

俺はなるだけ皆に迷惑をかけないように、普段通り過ごせるように精一杯の努力と我慢を重ねているのだ。だから時々ストレスがたまって爆発してしまう。嫁は謝ってきて、こっちも些細なことで怒って悪かったといった。嫁は心と体のバランスが崩れているといった。俺は今年はまって読んでいる宮沢賢治の「春と修羅小岩井農場」の一説を嫁にLINEで送った。

「もうけっしてさびしくはない

 なんべんさびしくはないと云ったところで

 またさびしくなるのはきまつてゐる

 けれどもここはこれでいいのだ

 すべてのさびしさと悲傷とを焚いて

 ひとはとうめいな軌道をすすむ」